アラサー独身女性のアプリ備忘録
数年前、私はアプリを使って本気で交際相手を探していた。
Tinderから東カレ、pairsにwith…登録だけしてそのまま面倒になって退会したアプリも含めれば、その数は結構な数だったと思う。
そして、当時の私はアプリを通して出会った男性たちとの会話を、備忘録としてEvernoteに記録しておくことが趣味の1つだった。
K 29歳 グラフィックデザイナー 身長170cm
コミュ障/声が小さい/色白/港区在住
佐々木蔵之介から堂々とした感じを奪って
陰気さを足して小さくした感じ
アプリ内のメッセージにて、彼の地元が私の好きなテーマパークの最寄り駅であることが発覚。
その後のラインでは会話が盛り上がるも、実際に会うともはやコミュ障レベルの人見知り。私だけがテンション高めに彼の最寄り駅についてベラベラ話していた。
彼との待ち合わせは渋谷だった。事前に予約してくれていた隠れ家系バルに入ったものの、まだロクに目が合わない。
この時点で彼への興味が削がれていくのを感じていたが、気まずい空気にさせまいと、私はさまざまな質問を投げかけることに必死だった。
しかし、全く会話のラリーが続かず、疲労感と虚しさばかりが募っていく。彼は友達がいないことをやたらアピールしてきたが、私は心の中で「まあそうでしょうね…」と納得せざるを得なかった。
さらに、好きな人には一途すぎて友達を優先されるともやっとするらしく、メンヘ…の気配を察知。皮肉にも類は友を呼ぶのだろうか。
会話そっちのけで次のアポ確保にガッツを見せるK
コミュ障の割にクリスマスの予定や、次に会う日程を具体的な日にちで打診してくるK。そのアグレッシブさを、少しは今の会話に活かして欲しいと強く思っていた。
そして、初対面から2時間ほど経ったころ、だんだん緊張が溶けてきた彼が自らの性格やポリシーを語りだす。
自分は完全に理数系で現実主義者であり、答えが決まっている数学が一番簡単だと主張する。
国語のテストでよくある”筆者の心情を答えよ”という質問があまり理解できないらしく、自分は共感性が乏しい人間なのかもしれないと自嘲する姿を見て、私はもはやただ目を伏せることしかできなかった。
ここで私が話の流れを変えようと、「変な性癖がありそうだ」とちょっと攻めた質問を投げかけてみると、「意外と普通だ」との返答。しかしここから、自分がいかに唇フェチであるかの主張が始まる。
マスクをするのはパンツを履くのと同じこと理論
「唇は内臓。内臓に何かを塗ったりするのはよく考えたらすごいこと。マスクをするのはパンツを履くのと同じことなんだ。」
その理論でいくと、私たちは普段マン…にいそいそと色をつけてノーパンで歩いていることになるのだが…というコメントは、彼の前ではできなかった。
しかし、この言葉のインパクトは自分が思っている以上に大きかったようで、未だに口紅を塗り直すときやマスクをする時に思い出しては、なんとも言えない気分になっている。
結局、この日はその後も当たり障りのない会話を交わして解散。それから何回か食事に誘われたが、理由をつけて誘いを断り、二度と会うことはなかった。
「〇〇ちゃんはやっぱり面白い人でした」と解散した日にラインが送られてきたが、君がつまんなさすぎるだけだと言いたい。
文/雲丹まぐろ(恋愛ライター)
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